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13 青春小説  学園物

十分後、安本の母が慌てふためいた様子ではいってきた。息を切らし、ぜいぜい言いながら
「勉、勉、どうしてこんなことに」
と泣くというよりほとんどわめきながら安本の枕元に近寄り、おろおろするばかりだった。
安本は死んだように眠っていた。
「坊ちゃんは眠ってます。起こさないように」
とゆかり先生は安本の母に言った。
「大したことないそうですから、安心してく下さい。ただ」
彼は、安本が薬に手を染めていたことを説明した。
安本の母はその場にへたれこみ
「なんで薬なんか、私の育て方が間違ってたのかしら。教えて下さい
先生。勉には困らないように十分お小遣いも渡しているのに。どうして薬なんか」
彼の顔を仰ぐように見た
「育て方が間違ってるんじゃありませんよ」
ゆかり先生がきっぱりとした口調で言った。一呼吸おいてさらに続けた
「育て方が間違っていたというのは一生懸命子供と向き合った親が言う言葉です。もう少し厳しくしとけばよかったとか。厳しすぎたかも知れないとか。おかぁさんは安本君に何をしてあげましたか。お金さえ渡しとけは大丈夫。そう思ってたんじゃありませんか。彼の心の声にどれだけおかぁさんは耳を傾けてきましたか。忙しいのはわかります。女手一ひとつでこれだけの会社を経営されてるんですもの。お金ですべて解決できる。そう思ってんじゃありませんか。たしかに商売はお金です。たくさん儲かれば勝ちです。でも人間はお金じゃないんです。子供はお金なんかで決して解決できないんです。わかりますか。むしろそんなものかえって毒になるだけです。よくご覧になって下さい。あなたの息子の姿を。何不自由ないお金を与えたせいで悪い友達が彼に群がり、薬に手を染めるようになったのてしょう。違いますか」
安本の母はぽろぼろと涙をこぼし、
「ごめんねごめんね」
と目を真っ赤にはらしていた。
彼はしっかりしてくださいおかぁさんと無言の言葉で肩に手をかけた
彼とゆかり先生はおかぁさんに任せて、病院を後にした。



日曜日、柔道の地区大会に彼は出かけた。
桜町中学の柔道部は一人目が相手高校の二人を倒したが、二人目が相手高校の三人目に倒され、一進一退の攻防で遂に大将戦となった。
桜町中学の大将は多感に攻めていたが、一本狙いに、外股を狙いにいったとこ逆に返され有効ポイントを奪われてた。
結局そのまま時間切れ引き分けとなり、桜町中学は敗れた。
相手高校は全国大会の常連高校で、柔道の名門であった。桜町高校はよく健闘したと言えた。
彼は、いい試合を見せていただきましたと顧問を訪ねた。
「惜しかったですね。武村先生」
「いや、攻めていたからよかとです」
と柔道の顧問武村先生は納得するように言った
「レスリングも攻めないと相手に点数が入ってしまいます」
「上高地先生」
と武村先生は呼びかけるように言ったたので彼は少し緊張を覚え、武村先生の方に向き、次の言葉を待った
「恋も同じじゃなかとですか」
恋も攻めないと始まらない。
「おっしゃるとおりです」
「攻めるというのはリスクを伴うものです。攻めると逆にやられるかもしれない。でも何もしないことには何も始まらない。攻めないと勝てない。守ってるだけだと切り開くことはできません」
そう言って武村先生は彼の肩を叩いた
「もっとも私はこっちのほうは」
と小指を立て
「跳ね飛ばされてばかりですけどな」
と高らかに笑った。
武村先生は、今の奥さんは学生時代のアルバイト先のレストランで知り合い、何度もアタックしたがその度に跳ね飛ばされ、諦めようとしたが、どうしても諦めきれず、相手の家の玄関の前で私と結婚して下さいと書かれた紙をおでこに張り、待っていたと言う。
それで彼女はなんて言ったんですと聞くと、大笑いして、結婚に承諾してくれたと答えた


「みんな朝ごはんは食べてきたかな」
彼は部員を並ばせて言った
「食べてこなかったものはいるか」
誰も手を挙げる者はいなかった
「うん、正直に手を上げるんだ。ほんとうにみんな食べてきたんだな」
そのとき赤坂の手がゆっくりと上がった





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テーマ : 自作連載小説 - ジャンル : 小説・文学

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